固定残業代のメリットとデメリット、残業代未払との関係

最終更新日 2024年4月20日

労働者を雇用する側は、社員に対して賃金や手当を労働の対価として支払いますが、その中にあらかじめ一定時間分の残業代を含ませておくのが固定残業代制度と呼ばれるものです。
一定の残業代を最初から給与の中に毎月定額で固定して支払う制度で、雇用契約書にはたとえば「月に30時間分の残業を含む」などと記載されているなら、毎月30時間までの時間外労働に伴う残業代は、通常の賃金とは別に残業代として支給されない資金体系をとっていることを現しています。

 

固定残業制度はみなし残業とも呼ばれる仕組み

固定残業制度はみなし残業とも呼ばれる仕組みで、会社との雇用契約の中で取り決められた一定の時間分に関しては新たに残業代を支払わないというものです。
労働基準法に定められている週40時間を超える時間外労働に対する割増賃金や、夜10時から朝5時までの深夜割増賃金、休日に仕事をした場合の割増賃金などに関しても、固定残業代として支払っている場合は支給しないのが一般的です。
ただし、みなし残業時間とされる定められた時間分を超えて働いた分の残業時間に関しては、会社側は労働者に対してきちんと残業代を支払わなければならないものです。
例えば営業職のように社外の外回りが仕事の中心になる働き方の場合には、会社側のほうで正確な労働時間を把握することは難しく、実際の労働時間がどれくらいだったかにかかわらず、一定の労働時間働いたとみなして賃金を払うという方法適しています。
また、会社側と労働者間の話し合いによって残業時間を含めた週40時間以上の労働時間を定めることもできるとされています。

 

会社側と労働者側にとってのメリットとは

会社側にとっては一定の時間内で残業が済めば、給与計算で残業代の面倒な計算や手続きをせずに済む点が大きなメリットになります。
一方、労働者側にとっては残業時間の少ない月であっても、毎月一定額の残業代を受け取ることができる点がメリットといえます。
確かに理論上はそうなのですが、みなし残業制度を適用して一定の残業代が支払われていた場合でも、実際にはそれ以上に残業時間が多くなり、定額の固定残業代を上回る場合にはその部分は会社側に請求して残業代を別途受け取ることができるにもかかわらず、現実にはみなし残業代として固定残業時間を超えた部分があってもサービス残業となって未払いになってしまうことが問題になるケースは少なくないといわれます。
会社側としては残業が少なかった月でも固定残業代を支払っているのだから、固定残業時間を超えた月があっても相殺できるはずと考えるかもしれませんが、制度上はそのように解釈して定額の残業代を超えた分を支払わないというやり方はできません。
営業職などの事業所外労働で仕事のほとんどが顧客回りなどの場合には、たしかにみなし労働時間制は有効な手段と考えられます。

 

裁量労働にあたる仕事もこの制度に適している

また、他にも企業の研究者など仕事の進捗状況によっては一時的に激務になる時期があり、ひと段落すればある程度まとまった休みを取得するという裁量労働にあたる仕事もこの制度に適しています。
しかし、残業しても残業代として支給されることはないにもかかわらず、仕事が早く終わったとしても自由に休むことができないという状況に陥りやすく、下手をするとサービス残業の温床になりやすいともいわれます。
この制度は労働基準法に決められた内容を満たしている限り、その会社独自の就業規則を定めること自体は違法でも何でもありません。
でも、定額の残業代が支払われていたとしても、実際の残業時間ははるかに多く、固定残業代を上回る場合は別途残業代を受け取る権利がありますが、実際には未払いになってしまうケースが少なくないといわれます。

 

まとめ

未払いの残業代は、労働者の側から会社に請求するという行為をしなければ取り戻すことはできません。
会社に対して請求書を送る、労働基準監督署に報告するなどの方法を労働者自身が取ることが求められます。