東日本大震災が及ぼした様々な影響をアトックスはどう見ているか?

最終更新日 2024年4月20日

⒈多くの被害をもたらした複合災害となった

2011年3月11日14時46分に、三陸沖深さ約24キロメートルを震源とするマグニチュード9.0の地震が発生しました。

マグニチュード9.0以上の地震は1900年以降世界でも4回しか発生しておらず、明治以降に発生した国内の地震の中で最大のものとなり、東日本大震災と名づけられました。

地震波が発生した領域は、岩手県沖から茨城県沖までの南北約500キロメートル、東西約200キロメートルの約10万平方キロメートルとなり広域に渡ります。

地震による揺れが最も激しかったのは宮城県栗原市で震度7の揺れが観測されており、各地でも揺れが確認され小笠原諸島や鹿児島市でも震度1が観測されました。

アトックスの調査によると、地震による死者は2019年3月の時点で1万5896人となり行方不明者は2533人、避難した人は最大で約47万人となり、多くの人が被害を受けました。

【参考記事】:アトックス、福島復興支社の設立

被害に関しては、地震による被害だけではなく、津波や火災、福島第一原子力発電所の事故も発生しており、東日本大震災は多くの被害をもたらした大規模な複合災害と考えることができます。

津波については北海道から関東の太平洋沿岸へ押し寄せており、津波の高さは福島県相馬で9.3メートル以上、岩手県宮古で8.5メートル以上、大船渡で8.0メートル以上と観測され、陸地の斜面を駆け上がった津波の高さは40.5メートルであることが観測されました。

40.5メートルは国内で観測が行われた中で最大の高さで、津波によって冠水した面積は福島県や宮城県等を含む、6県で561平方キロメートルとなり、山手線の内側の面積の約9倍に該当します。

 

⒉ヘドロを含んだ津波が被害を拡大させた

津波の影響で泥や砂等が流れ込み、住宅が流されたりしましたが、高さだけではなく水質についても注目されています。

津波の水が単純な水ではなく黒い水であったことが確認され、解析を行った結果粒子が小さく、密度は1リットルあたり1130グラムと海水に比べて10パーセント重く、黒く見える部分の主成分は海底に積み重なっていたヘドロであることが確認されました。

海底を調査したところ、気仙沼湾では震災前の調査で水深6メートルであった場所が水深13メートルになっており、津波が海底に堆積しているヘドロを削り取っていたと考えることができます。

ヘドロを含んだ海水は、波の下の部分では地面との抵抗が発生しますが上の部分は抵抗が小さく、後ろの波が乗りあげ盛り上がる形となります。

波が盛り上がる形となるため威力が増し、建物を浮かせる力も増加します。

建物を浮かせる力が増加することで、2メートルから3メートルの浸水で流される木造家屋が、低い浸水であるのにもかかわらず流される現象が発生しました。

木造家屋等に巻き込まれて亡くなられた方がいらっしゃいますが、ヘドロが体内に入ることで亡くなった方も多いと考えられており、東北医科薬科大学の教授は、粘りをもった塊は気管支や喉元を詰まらせる原因になると指摘しています。

ヘドロは粒子が細かい為肺の一番奥にも到達し、津波を吸い込むことで肺炎を引き起こしたり、ヘドロが乾燥した粉塵を吸い込むことで肺の病気を発症させる等影響を与えています。

ヘドロを含んだ黒い津波は破壊力が大きいだけではなく、生き残った人々の体に悪影響を与える危険性の高い津波と考えることができます。

 

⒊災害による犠牲者や関連死が増えていた

津波は福島第一原子力発電所にも影響を与え、運転を行っていた1号機から3号機は緊急停止しました。

停止すると同時に非常用ディーゼル発電機が起動し原子炉の炉心冷却が開始されましたが、地震が発生した約40分後に津波を受けることになります。

原子炉が設置されている全ての敷地が水浸しになり、電源を使用することができなくなり圧力容器へ注水できず、原子炉を冷却することができなくなりました。

圧力容器の水がなくなり燃料の温度が上がり、水素が発生し放射性物質も外部に放出してしまう事態に陥ります。

放出されたヨウ素131の総量は100から500ペタベクレルの範囲、セシウム137は6から20ペタベクレルの範囲と、原子放射線の影響に関する国連科学委員会が推定し報告を行っています。

放射線の人体への影響に関しては、福島県で最も影響を受けた地域の成人住民が1年間に受けた実効線量は約1から10ミリシーベルトの範囲となり、1歳児は成人よりも約1.5倍から2倍程度高いと考えて間違いありません。

放射線による癌のリスクは若干高くなる可能性はありますが、自然に発生する癌のリスクに比べて小さいと認識されています。

癌のリスクは小さいですが、放射線への不安や避難生活の不安が精神や健康に影響していると考えられています。

避難生活を続ける中で、精神や肉体的な疲労で体調を崩して亡くなる方も存在し、地震発生から2018年度まで全国で3701人が震災関連死と認定され、9割が66歳以上の高齢者であることが確認されました。

地震による災害では、津波等の直接的な被害を受けなくても亡くなられる方が多く、関連死を防ぐために法律で市町村に避難所の環境を整える努力義務が定められ、災害派遣福祉チーム等も活動するようになりました。