中小企業こそ海外へ!ベトナム進出を成功させた地方企業の事例集

「海外進出なんて、うちみたいな中小企業には夢のまた夢だ…」
「ベトナムが熱いと聞くけれど、結局は体力のある大企業の話だろう?」

もし、あなたがそうお考えなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。

こんにちは。
中小企業向けの海外進出コンサルタント、山崎 大地と申します。
私はこれまで15年間、特にここ10年はベトナムを中心に、30社以上の中小企業の海外進出をお手伝いしてきました。

現場で見てきたからこそ断言できます。
ベトナム進出は、もはや大企業だけの特権ではありません。
むしろ、キラリと光る技術やサービスを持つ地方の中小企業にこそ、大きなチャンスが眠っているのです。

この記事では、私が実際に支援してきた企業の事例も交えながら、地方の中小企業がベトナムで成功を掴むためのリアルな情報をお届けします。
机上の空論ではない、現場の汗と涙から得た「成功のリアル」を、ぜひあなたの会社の未来に重ねてみてください。

ベトナム進出を検討すべき理由

なぜ今、これほどまでにベトナムが注目されているのでしょうか?
私がコンサルティングの現場で経営者の皆様に必ずお伝えする、3つの大きな理由があります。

成長著しいベトナム市場の魅力

まず、圧倒的な市場の成長性です。
ベトナムの人口は2023年に1億人を突破し、国民の平均年齢は30代前半と非常に若いのが特徴です。
これは、これから消費の中心となる世代が豊富にいることを意味します。

実際に、多くの国際機関が2025年の経済成長率を6%台後半と高く予測しており、街は活気に満ち溢れています。
私が初めてホーチミンに駐在した10年以上前とは比べ物にならないスピードで、高層ビルが建ち、人々の暮らしが豊かになっていくのを肌で感じています。
このエネルギッシュな市場は、新しい商品やサービスを受け入れる土壌が十分にあると言えるでしょう。

日本とベトナムの経済関係の深化

日本とベトナムは、非常に良好な関係を築いています。
特に、日・ベトナム経済連携協定(VJEPA)をはじめとする複数の経済協定によって、多くの品目の関税が撤廃・削減されており、貿易や投資のハードルが低くなっています。

【現場の視点】
実際に、私が支援した部品メーカーでは、この協定のおかげで関税コストを大幅に削減でき、価格競争力を高めることができました。
こうした制度的な後押しは、特に体力に限りがある中小企業にとって大きなアドバンテージになります。

また、ベトナムは親日国としても知られており、「Made in Japan」の品質やサービスに対する信頼は絶大です。
この「日本のブランド力」を追い風にできるのも、大きな魅力の一つです。

地方中小企業にとっての具体的メリットとは?

では、地方の中小企業にとって、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?

  • メリット一覧
    • 新たな販路の開拓:縮小する国内市場から、成長する海外市場へ販路を広げ、売上の新たな柱を築けます。
    • 生産コストの最適化:比較的安価で質の高い労働力を確保し、製造コストを抑えることが可能です。
    • 優秀な人材の確保:勤勉で学習意欲の高い若い人材が多く、特にIT分野などでは優秀なエンジニアの採用も期待できます。
    • 事業継続計画(BCP)の強化:生産拠点を国内とベトナムに分散させることで、自然災害などのリスクに強い事業体制を構築できます。

「うちの会社には、どんなメリットがあるだろう?」
ぜひ、あなたの会社の強みと照らし合わせてみてください。

成功企業の共通点と準備ステップ

「ベトナムの魅力は分かった。でも、何から始めればいいんだ?」
当然の疑問だと思います。
私が支援してきた成功企業には、いくつかの共通した準備の進め方がありました。

事前調査と現地文化の理解がカギ

成功している企業は、例外なく徹底した事前調査を行っています。
特に重要なのは、以下の3点です。

  1. 市場調査:自社の製品やサービスが、ベトナムのどの地域(北部・中部・南部)の、どんな層に響くのかを具体的に調べます。ホーチミンで売れるものがハノイで売れるとは限りません。
  2. 法規制の確認:自社の事業が外資規制の対象になっていないか、法人設立の条件などを専門家を交えて確認します。
  3. 文化・商習慣の理解:ベトナムでは、ビジネスの前に個人的な信頼関係を築くことが非常に重要です。 また、家族を何よりも大切にする文化があることも理解しておく必要があります。

いきなり大きな投資をするのではなく、まずはJETROの資料を読み込んだり、私のようなコンサルタントに相談したりして、情報収集から始めることが失敗しないための第一歩です。

信頼できる現地パートナーの見つけ方

特に初めての海外進出では、現地のことをよく知るパートナーの存在が成功を大きく左右します。
良いパートナーを見つけるには、以下のような方法があります。

  • JETROや地方自治体の紹介
  • 取引のある金融機関からの紹介
  • 信頼できるコンサルタントからの紹介

私がいつもアドバイスするのは、「偶然の出会い」に頼らないことです。
展示会で名刺交換しただけ、知人から紹介されただけ、といった安易な理由でパートナーを決めると、後々トラブルになるケースが後を絶ちません。
相手の経歴や実績をしっかり確認し、複数の候補と面談した上で慎重に選ぶべきです。

ベトナムでの法人設立・法規制の基本

ベトナムで会社を設立するには、日本とは異なる手続きが必要です。
大まかな流れは以下の通りです。

  1. 投資登録証明書(IRC)の取得:外国投資家として、事業計画などを政府に申請し、認可を得る手続きです。
  2. 企業登録証明書(ERC)の取得:IRC取得後、法人として正式に登記する手続きです。
  3. 各種登録・口座開設:税務登録や銀行口座の開設などを行います。

これらの手続きは複雑で、数ヶ月かかることも珍しくありません。
自社だけで進めるのは非常に困難なため、必ず現地の法律に詳しい専門家のサポートを受けるようにしてください。

例えば、ベトナムの進出支援(実績:900件以上)、M&Aのご相談ならエスコンサルティング のように、豊富な実績を持つ専門会社は、複雑な法規制や現地特有の商習慣にも精通しており、心強い味方となってくれるでしょう。

地方企業のリアル事例集:成功への道筋

ここでは、私が実際に支援させていただいた地方企業の成功事例を、業種別にご紹介します。
(※プライバシー保護のため、一部情報を変更しています)

【製造業】新潟県の金属加工業が見つけた“人材とスピード”

新潟県にある従業員30名の金属加工会社A社は、国内の受注減と後継者不足に悩んでいました。
そこで、活路を求めてベトナムへの進出を決意。
工業団地内に工場を設立し、精密部品の製造を開始しました。

成功のポイントは、勤勉な若手人材の採用と、日本本社との連携によるスピーディーな技術指導でした。
現地の若者は驚くほど吸収が早く、日本の熟練技術者の指導のもと、わずか半年で高い品質レベルを達成。
今では、ベトナム工場が新たな収益の柱となり、日本本社の雇用も守ることができています。

【IT企業】福岡発のスタートアップが掴んだ“開発コストと市場性”

福岡のITスタートアップB社は、アプリ開発のコスト削減と東南アジア市場への足がかりとして、ベトナムのダナンに開発拠点(オフショア開発)を設立しました。

当初は言語の壁に苦労しましたが、日本語が堪能なブリッジSE(日本と現地の橋渡し役)を採用したことで、コミュニケーションが円滑化。
日本の3分の1程度のコストで優秀なエンジニアを確保できただけでなく、開発したアプリをベトナム市場向けにローカライズして展開することにも成功し、一石二鳥の効果を得ています。

【飲食業】岐阜のラーメン店が“現地化”で実現した人気店への道

岐阜県で人気のラーメン店C店。
店主は「自分のラーメンを世界で試したい」という夢を叶えるため、ホーチミンに出店しました。

成功の秘訣は、味の「現地化」でした。
日本の味をそのまま持ち込むのではなく、現地の食文化を徹底的にリサーチ。
ベトナム人が好む少し甘めの味付けにしたメニューや、パクチーをトッピングできるサービスを加えたところ、これが大当たり。
SNSで話題となり、今では行列のできる人気店になっています。

【美容・サービス】岡山のエステ企業が“日本品質”で勝負

岡山県でエステサロンを展開するD社は、経済成長とともに美への関心が高まるベトナム市場に注目。
「日本の丁寧な接客と高い技術」を武器に、富裕層が多く住むエリアにサロンをオープンしました。

徹底したスタッフ教育で「おもてなし」の心を伝え、最新の日本製美容機器を導入したことが、品質にこだわるベトナムの女性たちの心を掴みました。
客単価は日本の店舗より高く設定していますが、「高くても本物のサービスを受けたい」というお客様で予約は常にいっぱいです。

成功の裏にあった小さなつまずきとその乗り越え方

もちろん、どの企業も順風満帆だったわけではありません。
A社は設立当初、従業員の突然の退職に悩まされました。
原因を探ると、ベトナムでは「家族の行事」が仕事より優先される文化があることを理解していなかったのです。
そこで、旧正月前の長期休暇を認めたり、家族手当を導入したりすることで、従業員の定着率が大幅に改善しました。

成功の裏には、こうした文化の違いを乗り越えるための地道な努力が必ず存在します。

現地で直面する課題とその乗り越え方

夢ばかり見てはいられません。
海外進出には、必ず「壁」が立ちはだかります。
事前に課題を理解しておくことが、リスク管理の第一歩です。

コミュニケーションと商習慣のギャップ

言葉の壁はもちろんですが、それ以上に「考え方」の違いに戸惑う経営者は少なくありません。

日本の常識ベトナムの常識
「言わなくても分かる」「言わないことは存在しない」
時間厳守は絶対時間には比較的ルーズ
YESは「同意」YESは「聞きました」の合図
公私の区別公私の繋がりを重視

「報・連・相」が徹底されない、納期を守らないといった問題は日常茶飯事です。
これを「やる気がない」と切り捨てるのではなく、「そういう文化なのだ」と理解し、日本式を押し付けずに、こまめに進捗を確認する、タスクを細分化して指示するなど、マネジメント側が工夫する必要があります。

予想外のコストと為替リスクの対応策

「計画よりも費用がかさんでしまった」というのも、よくある失敗の一つです。
特に、駐在員の給与や住居費、通訳費用など、見落としがちなコストがあります。

また、ベトナムドン(VND)の為替変動は、収益に直接影響します。
対策として、以下のようなことが考えられます。

  • 事業計画は、複数の為替レートを想定して複数パターン作成する。
  • 取引の決済通貨を米ドルや日本円にする契約を結ぶ。
  • 為替予約などを活用してリスクをヘッジする。

人材マネジメントと育成のリアル

ベトナムでは、より良い条件を求めて転職することへの抵抗が日本より少ないのが実情です。
特に、経験を積んだ管理職や専門職の人材は、常に引き抜きの対象となっています。

人材の定着には、給与だけでなく、働きがいのある環境づくりが不可欠です。

  • 明確な評価制度とキャリアパスを示す
  • 日本での研修機会を設ける
  • 従業員の誕生日や家族を大切にするイベントを企画する

こうした地道な取り組みが、従業員のロイヤリティを高めることに繋がります。

「失敗事例」から学ぶ進出判断のポイント

私がこれまで見てきた撤退事例には、共通点があります。
それは、「トップの思い込み」と「準備不足」です。
「行けば何とかなるだろう」という安易な考えで進出し、現地の法制度や商習慣の壁にぶつかり、資金が尽きてしまうのです。

進出を判断する前に、最低でも以下の点はクリアにしておくべきです。
「この事業は、本当にベトナムでなければならないのか?」
「失敗した場合の撤退ラインはどこか?」
冷静な視点で自社を見つめ直すことが、大きな失敗を防ぎます。

今こそ、地方企業にとってのチャンス

課題はありますが、それを乗り越えるためのサポートも充実しています。
今こそ、地方の中小企業がベトナムを目指す絶好の機会だと私は考えています。

支援制度・補助金・JETROの活用法

国や自治体は、中小企業の海外展開を積極的に後押ししています。

  • 海外展開補助金:市場調査、海外展示会への出展、ウェブサイトの多言語化などに使える補助金が多数あります。
  • 外国出願補助金:海外で特許や商標を取得する際の費用の一部が補助されます。
  • JETRO(日本貿易振興機構):現地の情報提供から、ビジネスマッチング、専門家への相談まで、幅広い支援を無料で受けられることも多いです。

こうした公的支援をフル活用すれば、初期投資を大幅に抑えることが可能です。
「知らなかった」では、あまりにもったいない。
ぜひ一度、あなたの会社の所在地にある支援機関の窓口を訪ねてみてください。

ベトナムとの連携で広がる“次の展望”

ベトナム進出は、単なる「海外工場」「海外店舗」に留まりません。
現地の優秀なパートナーと組むことで、ベトナムを拠点にASEAN全域へ市場を広げることも夢ではありません。
また、日本とベトナム、双方の強みを活かした新しい製品やサービスを共同開発することも可能です。
ベトナムとの連携は、あなたの会社の可能性を無限に広げてくれるはずです。

「小さく始めて、大きく育てる」戦略のすすめ

最後に、私が最もお伝えしたいことです。
海外進出は、必ずしも大きなリスクを取る必要はありません。

まずは、

  • ECサイトでテスト販売をしてみる
  • 現地の代理店に販売を委託してみる
  • 駐在員事務所を設立して市場調査に専念する

といった「小さく始める」方法もあります。
そこで得た手応えと経験をもとに、少しずつ投資を拡大していく。
この「スモールスタート」こそ、体力に限りある中小企業が取るべき賢い戦略なのです。

まとめ

この記事では、地方の中小企業がベトナム進出を成功させるためのポイントを、私の実体験を交えて解説してきました。

  • 成功の本質は“準備と適応”にあり
    • ベトナムは魅力的な市場ですが、成功するには徹底した事前準備が不可欠です。
    • 日本の常識を押し付けず、現地の文化や商習慣に柔軟に適応する姿勢が求められます。
    • 信頼できるパートナーを見つけ、公的な支援制度を賢く活用することが成功への近道です。

私自身、ベトナムという国と、そこで働く人々のエネルギーに魅了され、この仕事を続けています。
そして、日本の素晴らしい技術やサービスを持つ中小企業が、この大きなチャンスを掴むお手伝いができることに、大きなやりがいを感じています。

現地のリアルを知れば、進出のハードルは、あなたが思っているよりもずっと下がります。

この記事を読んで、少しでも「うちの会社でも、できるかもしれない」と感じていただけたなら、これほど嬉しいことはありません。

あなたの会社にも、ベトナムのチャンスは必ずあります。
まずは、その第一歩として、情報収集から始めてみませんか?

最終更新日 2025年7月14日